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日本橋散策 VOL.01/ベーカリー編
日本橋散策 VOL.01/ベーカリー編

2024.09.19

日本橋散策 VOL.01/ベーカリー編

Bakery bank/BEAVER BREAD/Parklet/PARKER HOUSE BUTTER ROLL/Cawaii Bread & Coffee

日常に笑顔を添える
上質なパンの誘惑

兜町を起点に、足を伸ばしてさまざまな場所へ。平坦で歩きやすく景観にも飽きがこないため、周辺を散策しやすいのが日本橋エリアの強みのひとつだ。メディアで話題の店舗をお目当てに、はたまた知る人ぞ知る自分だけの隠れ家を見つけに……楽しく歩いて訪れれば、街も人も空気も、自分ともっと身近な存在になるはず。

VOL.1は、バラエティに富んだ日本橋エリアの絶品ベーカリーをご紹介。デイリー使いにも、ちょっとした自分へのご褒美やお持たせにもぴったりな、個性たっぷりの5店をお見逃しなく。


Bakery bank(兜町)

食事としての満足度高し。見目麗しいパン

2022年12月にオープンして以降、すでに兜町の“顔”のひとつに成長した「Bakery bank」。開業当初はこの街の名物である二つのパティスリー「ease」と「teal」を手がける大山恵介さんがプロデュースするベーカリーとして注目を集めたが、甘いものに限らず惣菜系のパンまでどれも格別の味わいを誇る。

「この店の特徴は、固定概念にとらわれず、従来のパン屋では考えられないことを平気でやってのけるところ」と、店長の須貝さん。「業界の通説を覆し、長時間生地をこねつづけて求める食感にたどりつくなど……普通ならやらない手間暇をかけ、心から“おいしい”と思えるものを。また、一層一層までもが美しいパンをつくるということを心がけています」

中に挟む惣菜にもこだわり抜き、1つでも食事として成立するバーガーやサンドイッチが多数。新顔のチキン南蛮バーガーは、塩レモンを使った肉厚のチキンとまろやかな特製タルタルソースが爽やかにハーモニーを奏でる。ザクザク食感でずっしり食べごたえのある本格スコーンを始め、お好みのパンへ贅沢に「teal」のバニラジェラートをトッピングすることも可能。広い店舗面積を活かし、今後は夜のイベントも積極的に開催したいというから、乞うご期待。

Bakery bank
東京都中央区日本橋兜町6-7 BANK 1F
Instagram


BEAVER BREAD(東日本橋)

定番にツイストを効かせた多彩なラインナップ

兜町から人形町方面へ歩を進めれば、行列の絶えない「BEAVER BREAD」にたどりつく。地域の人に愛されるだけでなく、兜町の「Neki」を始めとする都内のレストランでもテーブルブレッドとして採用。2023年10月には虎ノ門ヒルズの新エリア、ステーションタワー内に姉妹店をオープンさせた。

中に入ると、コンパクトでかわいらしい空間の中にパンが所狭しと並ぶ。マネージャーの金子さんは「いわゆる“定番”メニューに、ちょっとめずらしい食材を掛け合わせ遊び心を演出したものが多いんです」と教えてくれた。例えばスタッフ人気ナンバーワンのシナモンロールの生地には、粒状のカルダモンを練りこみフィンランド風の味わいに。山麓のおいしい水を飲んで育つ「阿蘇自然豚」を使用したベーコンエピは、カリッと香ばしい歯ごたえの直後、肉のジューシーさとマスタードの酸味が心地よく鼻に抜ける。女性や子どもの口の大きさに難なくフィットするほどよい厚みも、これを目当てに訪れる客がいる理由のひとつなのかもしれない。

メニューはいつでも5〜60種類を取り揃え、季節によって移り変わる。「今後はあんバターやハム、野菜をたっぷり使ったタルティーヌなどのサンドイッチにも力を入れ、“町のパン屋”としてもっと親しまれる存在になれれば」

BEAVER BREAD
東京都中央区東日本橋3-4-3
Instagram


Parklet(小舟町)

国産食材を中心に、パンで人と場をつなぐ

兜町から徒歩10分ほどの場所にある「Parklet」は、公園に隣接したカフェベーカリー。窓からたっぷりと差し込む日差しと緑の風景、そしてナチュラルシックなインテリアが調和する空間で過ごすひとときを目当てに、朝早くから訪れるファンも多い。

開業当初からの人気メニューが、天然酵母を使用したシグネチャーのカントリーブレッドを用いたアボカドデュッカトースト。国産小麦粉を数種ブレンドし、オーナー夫妻の出身地であるカリフォルニアの伝統製法に則ってつくられた食事パンは「素朴だけれど複雑な味わいがおすすめ。素材一つひとつのよさと絶妙なバランスで成り立っています」と、ヘッドベーカーの水野さんは話す。「デュッカ」とは中東スタイルのミックススパイスのことで、購入も可能。同じくここで働くマネージャーの藤沢さんのお気に入りは、モーニングメニューのグラノーラ&ヨーグルトだ。厨房で手づくりされる濃厚ヨーグルトは、柔らかな優しいとろみと素朴なグラノーラのハーモニーがやみつきに。ランチで利用するなら、フレッシュな季節野菜とハーブの素材を生かしたガスパチョも欠かせない。

カフェにはギャラリースペースが設けられ、クリエイターや他の飲食店とのコラボイベントを頻繁に開催。「ベーカリーなのでモーニングの印象が強いですが、これからはフードメニューを充実させ、夜の営業にも取り組んでいきたいと考えているんです」

Parklet
東京都中央区日本橋小舟町14-7 1F
Instagram


PARKER HOUSE BUTTER ROLL(新川)

目指したのは、翌日もおいしいバターロール

茅場町から新川エリアに足を踏み入れてすぐのところにあるのが「PARKER HOUSE BUTTER ROLL」。バターロール専門店としてオープンし、その本格的な味わいとバラエティに富んだメニューの数々で、遠方からも訪問者を増やしてきた。

ベーカリー運営は初だったという男性社員3人が知恵を出し合った開業当初。店長の三澤さんは次のように振り返る。「“パサパサしている”とか“口内の水分がなくなる”といったパンにまつわるネガティブなイメージをなくすため、ストレスなく柔らかくて次の日食べてもおいしいものを目指し、試行錯誤を繰り返しました」。クリーミーな口どけの何よりの秘密は、水。さまざまな種類を飲み比べ「島根県金城の地下水──弱アルカリ性の軟水を使用することで、小麦粉やバターを変えるより劇的に、目指す味へと近づけたんです」。もちろんバターもたっぷりと。成形する際にバターの塊を巻き込んで、表面はさっくりしつつもジュワッとリッチなテクスチャーを実現している。

店の奥のカフェスペースにはバルミューダのトースターを設置し、いちばんおいしく食べてもらえる工夫も欠かさない。同時に「新製品は月にひとつは出せたら。隠れた人気メニューは、パンをソフトクリームのコーンに見立てたバターロールソフト。夏季は中身にホイップクリームを入れて凍らせた、冷やしバターロールも計画中です」とのこと。いつ訪れてもタイムリーなお気に入りが見つかりそうだ。

PARKER HOUSE BUTTER ROLL
東京都中央区新川1-1-7 1F
Instagram


Cawaii Bread & Coffee(八丁堀)

ベーシックを極めたクオリティの高さに舌鼓

茅場町と新川のあいだを流れる亀島川伝いにそぞろ歩きを続けると、八丁堀の「Cawaii Bread & Coffee」に行き当たる。ここは“心地よい運河が流れるこの地域に本格的なベーカリーやカフェを”と、アートやデザインに特化した編集業を営むチームが立ち上げたアドレスなのだ。

オーナーの原田さんは持ち前のリサーチ力とエディット力を発揮し、ベーカーやバリスタを招聘。ところがベーカー不在の折、自ら腕をふるうことに。そうして、自ら空気中の酵母菌を集めて育てた発酵種でつくるサワードゥブレッドに着手した。「素材本来のうまみやアレルギーの出にくいパンを追求し、試行錯誤を繰り返してようやく完成させたんです」。今、店内ではガラス張りの工房の中で、職人が手際よくパンを焼く。人気のクロワッサンはさっくりとした表面に中身がぎゅっと詰まって、しっとりとした多重層が魅力。上質な素材を活かした噛みごたえのあるバゲットもおすすめで、こちらに入谷の老舗「太田ハム」のフレッシュな逸品を掛け合わせたハム&チーズサンドも必食だ。「ちなみにコーヒーは食べごたえのあるパンに合わせ、京都の『オオヤコーヒ焙煎所』仕込みのダークローストが特徴です」

店の奥には、運河を一望できるテラス席が。屋形船とコラボレーションを果たし、舟遊びの際にパンとチーズや飲みものを提供するイベントを不定期で開催することも。クラウドファンディングなどの活動にも果敢に取り組み、八丁堀のベーカリー文化を牽引。愛されるコミュニティとして成長を続けている。

Cawaii Bread & Coffee
東京都中央区八丁堀2-30-16 T&Yビル1F
Instagram

Interview&Text : Misaki Yamashita

Photo : Naoto Date