●cavemanのメンバーと仲が良いと伺いました。
2017年頃だったと思うんですけど、ムラカミカイエさんとの対談インタビューがきっかけで、cavemanをプロデュースした姉妹店のKabiの安田翔平さんと江本賢太郎さんを紹介してもらったんです。それまでも友人から、クラブミュージックが好きな人たちがやっていて最高だから行こうよって誘われていたんですが、なかなか食べに行く機会がなくて。
私は音楽をやっていて食べるのが好き、向こうは料理を作っていて音楽が好きで、そういう出会いってあまりないので嬉しかったですね。毎回コースを食べるわけではないけど、Kabiの2階のバーで飲んだり、イベントに顔を出したり、あとは翔平たちがクラブに遊びにきたり、別の店に飲みに行ったりいわゆる普通の友達です。cavemanのスタッフはKabiにいた人もいるので、それで店に行くと自然と会話するようになりました。
●兜町を初めて訪れたのはいつ頃ですか?
K5のオープニングパーティーの日は、普通に遊びに来ました。それからしばらくして、Kabiが休みの日に、カイエさんや翔平とcavemanに夜のコースを食べに来ました。
●cavemanにはどれくらいの頻度で来ていますか?
緊急事態宣言の時には、ランチじゃないと外でごはんを食べられなかったのもあって、ランチに数回来たりしました。2、3週間前にもバーに飲みに来たし、コースも食べにいったし、最近わりとよくcavemanに来ていますね。
●他に兜町で行く場所はありますか?
Human Natureに行ってから、cavemanっていう流れが定番です。Human Natureも、内装の音響を手がけた人が仲の良いDJだったりして、わりと近いコミュニティですね。ワインを飲みながら、SRのバスクチーズケーキを食べるのが好きです!あれ、おいしいですよね。通販でしか買えなくて、でもすぐに売り切れるから、店にあったらつい注文したくなります。
あとお茶が好きなので青淵-Ao-にも行くし、田中開くんとは大学は違うけど同級生なんで、共通の友人が昔から多かったりして、Kabiとかでよく会います。easeのケーキも好きです! 兜町に来たらまとめていろいろ行かなきゃという気持ちになって、大体2軒くらいは周りますね。
●兜町界隈に知り合いが多くいらっしゃるんですね。
ぼちぼちですね、というのも飲み場で出会う人が多いから、あまり認識しないで喋っていることも多くて、会えばわかるみたいな人も多いかもしれません(笑)。
●よく飲んでいらっしゃる印象ですが、最近はどんな風に過ごしていますか?
これまで人を家に呼ぶということを意識してなかったんですけど、去年くらいから人が家に来ることが増えました。友達が来る時は、飲みながら料理します。食べることも好きだし、料理することも好きだし、意外と何でも作ります。
●仕事の仕方もこの1、2年で変わりましたか?
なかなか外に出られない分、中を充実させようと思って、スタジオ的なものをちゃんと家の中に作りました。音楽を作ったり聞いたりする時間がいちばん長いけど、あとは文章を書いたり、本を読んだり、映画を観たり、半分仕事、半分趣味みたいな感じで過ごしています。でも去年と今年では、同じように緊急事態宣言が出ていてもちょっと違いましたね。今年は音楽で関われることでも、今までやったことないことも挑戦するようにしました。それにこの10月からは、また流れが変わったなと思っています。
●ダイレクトに影響を受ける仕事ですよね。
イベントとかの現場でやるDJはそうですね。何をしてても結局現場でもDJが一番好きな表現なので、それを続けていくためにも臨機応変に対応していかないといけないな、と思いました。準備していたイベントがなくなっても、それでいちいち落ち込んでいたら続かない。へこむけど、じゃあ違うアプローチで音楽を伝えていこうというマインドに持っていかないと、元に戻った際に自分の更新が止まっていたら意味がない。あんまりこういうことに慣れたくはないけど、切り替えは意識していますね。
●コロナ禍で新しく始めたことはありますか?
音楽で関われることで、いろんな分野に手を出しています。音楽で関わることができる部分はどの業界でもあります。なので、好きな他分野にもっと関わっていきたいなと思っています。具体的にあげると、映画音楽を作っているのと、女子バスケリーグの音楽の監修でしょうか。
●いろんなカルチャーに精通していらっしゃると思うんですが、そもそもDJという仕事を選んだのはどんな経緯ですか?
中高の時にバンドをやっていたんです。メンバーたちとSUMMERSONICやFuji Rockに毎年行ったりしていて、その時にDJをちゃんと見て、音楽にそんなアプローチもあるんだなと思ったんですね。あとラジオをたくさん聴いていたので、そこからもDJを知って、趣味でやりたいと思い始めました。
ギターみたいに安いのをすぐ買ってみて練習する感じでもなかったので、mixiのコミュニティや友達の友達に紹介してもらったり、機材を持っている人を探したりするところから始めました。一旦操作方法を教えてもらえば、あとは練習して自分で学ぶだけなので、好きなDJが出ているクラブに遊びに行って、いろんな音楽を聴いて、DJしてを繰り返しているうちに趣味の領域を超えて仕事になったという感じです。
●キャリアの中で、ブレイクスルーしたなという瞬間ってありましたか?
いくつかありますが、特に嬉しかったのはラジオがレギュラーになった時ですかね。いろんな人に聞いてもらえる機会が増えて、DJのアプローチだけではできなかったこともできるようになった。学生時代からずっとJ-WAVEを聞いていて、特にジャイルス・ピーターソン(※1)がやっている15分番組に大きく影響を受けたんです。日本のラジオDJって基本的にすごく喋ると思うんですけど、ジャイルス・ピーターソンは曲を流しながら紹介していくスタイルで、ラジオDJってこういう人もいるんだって知りました。そんなJ-WAVEで、自分の音楽番組を持てたというのは大きかったですね。
そこからDJ以外のミュージシャンと関わったりすることも多くなって、交友関係の幅が広がっていきました。もっといろんなアプローチでダンスミュージックを広めたいと言う気持ちと共に、他ジャンルとのコミュニケーションを通じてより広く音楽を楽しめるようになった気がします。
※1 ジャイルス・ピーターソン
ラジオ・クラブDJ、レーベル主宰、ジャーナリスト
●交友関係が広がることで、考え方も広がっていった感じでしょうか?
クラブでDJとして自分が鳴らしたい音楽のジャンルというかテンションはけっこう限っていて、クラブで集中して踊り続けたくなるようなものを目指しているんですが、普段はジャンルもテンションも関係なく色んな音楽を聴きます。世界におけるジャンルとしてのアンダーグラウンドさは同じでも、バンドやラッパーといったものに対して日本ではDJは認知度はまだまだ低いです。なのでDJとしてシーンにどう貢献できるのかは常に意識しています。
DJ自体を認知してもらえるよう、垣根なく色んな音楽に混ざってみたり、はたまた他のDJや後輩としっかり世界で見てきたイベントを作ったり。もちろん自分のスキルをあげたり。内容はそのままなんだけど、見え方をもっと多面的に変えようとか、そういうことを考えるようになりました。
●海外にもアプローチしたりしていますか?
Boiler Room Tokyoに出た時の映像が3年後くらいによく見られるようになって、そこから海外に呼んでいただくことが増えました。今までは自分からオファーをかけていたのが、向こうから呼ばれるようになったというのは嬉しかったですね。最近は海外とか東京意外とか関係なくアプローチするようになりました。インスタでフォローして、曲を作ったら音源を送ったり、ストーリーで最近聞いてよかった音源をタグ付けしてシェアしたり。有名無名、場所を問わず喜んでくれて繋がったりもする。今年は特に現地に行ってコミュニケーションを取れないから、そういうことをマメにやっています。
●これから考えていることはありますか?
けっこう何でもやりたいですね(笑)。最近だとWリーグ(※2)の音楽を手がけました。今回のオリンピックで女子バスケが注目されたと思うんですけど、Wリーグはまだそこまで盛り上がってなくて、でも世界ランクでいうと男子バスケより強いんです。学生時代にバスケ部だったので、今も友人たちとたまにバスケをやるんですけど。それ以上に今はバスケ観戦にはまっています。そこで、音楽で何かお手伝いできないかと。
※2 Wリーグ
バスケットボール女子の日本リーグ
●なぜWリーグの音楽を変えたいと思ったんでしょうか?
NBAを見てもらえればわかると思いますが、バスケは本当はカルチャーと結びつきが強いスポーツで、めちゃくちゃエンターテイメントなスポーツです。でも日本ではそういうところが欠落していて、スポーツの側面しか伝えられてないのがもったいないなと思っていました。なので、女子バスケのスポーツとしての魅力と合わせて、色んな角度で盛り上がってファンが増え続けたらいいなと。なのでまず、選手たちも上がる、かつ音楽ファンも楽しめたら会場にいく価値が上がるかなと。バスケキッズがバスケと合わせて音楽を知るってくれてらさらに嬉しいし。オリンピックも会場ごとに選曲が違っていて、かっこいいなと思うところもあったんですよね。クライミングとか派手めなテクノとがずっと流れていたりして、音楽は重要だなと改めて感じました。
●スポーツ観戦もやっぱり音楽視点なんですね。例えば、お店に食べに来たりしても音楽が気になるものですか?
めちゃくちゃ気になります(笑)。音楽も内装や香りと一緒で空間を作るものなので、そういうこだわりが見えると逆に好きになります。自分の好きなジャンルがかかっているとかではなくて、コンセプトにそってチョイスできているかです。でもそれって今までの経験の積み重ねでできることだから、そもそも経験がない人には情報として入っていないとも思います。
音楽は、経験することによって楽しみ方が広がる。それは料理と一緒だと思っていて、食べたことがないものを食わず嫌いのままか、初めて食べてみて驚いておいしく感じ始めるか。パクチーのおいしさを子供の頃にはわからなかったけど、大人になって食べる回数が増えたらどんどん好きになるみたいな。経験値によって感じ方が変わるのはどの分野も面白いことだなと思うし、大人になった今も好奇心をかき立ててくれます。
●街に出ること自体も経験値を上げてくれますか?
色んな街に行ってみて遊ぶことは、新しい出合いがたくさんありますよね。食べたことのない組み合わせ、まだしたことのない経験、初めて出会うおもしろい人。今まで知らなかったものに出会えることは楽しい。でもこれって、身近なところでもできることだと思うんですよね。海外の方が手っ取り早く視点を変えられることもあるかもしれないけど、日本にいたって知らなかった街や新しい出会いは無限にあります。
●海外や国内問わず、好きだなと思う街の共通項ってありますか?
海外だとストックホルムが好きなんですけど、建物もひと回り大きくて、道も広くて抜けが良くて、なんだか心地いいんです。兜町も建物が大きくて、重厚感があるのがいいですよね。でも道が狭いから、どこかパリの郊外みたいな雰囲気もある。兜町でパーティーしたいですよね。
●最後に、兜町はLicaxxxさんにとってどんな街ですか?
ちょっと大人になった私たちが新しい遊び場にするにはぴったりなんじゃないでしょうか。友達に連れてきてもらったのがきっかけで、今では新しい友達を連れてきたりもします。新宿、渋谷の方によく行っていた私たちがちょっと足を伸ばしてわざわざいかなきゃない空気がある感じもいい。そしてそういう意識をうっすら持ってる人が兜町に集まってくる。何か、今までとは違うことがあるだろうなと思わせてくれる街ですよね。
Licaxxx
東京を拠点に活動するDJ、ビートメイカー。
2016年に出演したBOILER ROOM TOKYOのYoutube再生回数が約50万回再生を記録。
DJとして国内外のビッグフェスやクラブに出演する他、世界各国のラジオにDJMIXを提供しメゾンブランドのコレクションやCM等、幅広い分野への楽曲提供を行う。世界中のDJとの交流の場を目指しているビデオストリームラジオ「Tokyo Community Radio」の主宰。
Text : Momoko Suzuki
Photo : Naoto Date
Interview : Momoko Suzuki