2023.07.04
True Colors of Portland
美食の街として知られるアメリカ・オレゴン州のポートランドから、6名のシェフやコーヒー関係者が来日。多様な背景を持つ新世代のシェフやコーヒーロースターたちが、ポートランドの今を味わえるブランチメニューを披露した。
アメリカのBon Appétit誌による「2022年全米ベスト・ニュー・レストラン」のひとつに選ばれた創作メキシカン「Republica」からは、シェフのJose “Lalo” Camarenaさんが来日。
出身地のロサンゼルスとメキシコのマサトランを行き来して育ち、今回、初めて北米以外の国へやって来た23歳の若きシェフは、自家製トルティーヤの白身魚タコスをふるまってくれた。
フードカート「Matta」の共同オーナー、Richard Van Leさんは、カリフォルニア生まれのベトナム系アメリカ人。オリジナルのバーガーやサンドイッチなど、アメリカのレンズを通したベトナム料理が人気を集めている。そんな現地のテイストを味わえる、ベトナミーズ・フライドチキンが今回のメニュー。
Richardさんはこのイベントの数日後に、兜町K5の地下にあるBrooklyn Breweryのビアホール「B」でもポップアップを開催。Richardさんと「B」のクルーが好きなHIP-HOPが流れる中でいただくベトナミーズ・フライドチキンのプレートは、ブルックリンラガーとの相性も抜群だった。
ポートランドで「Tusk」や「Sweedeedee」などの人気店でシェフを務めていたSam Smithさんのメニューは、得意のホットドッグ。現地でもポップアップを行っている本場の味を日本でもぜひ味わってほしい、とチリ・ホットドッグとベーコン・ハラペーニョ・ホットドッグの2種類をつくってくれた。
Samさんは今年の秋に向けて、タイ料理とチャイニーズを中心とした新レストラン「Yaowarat」をポートランドで開業準備中とのことで、そちらも楽しみだ。
「HeyDay」のLisa Nguyenさんは、ミニ・ベイクド・ドーナツとブラウニーを販売。もち粉を使ったアジアンテイストのミニ・ドーナツは、紫ヤマイモ、抹茶ストロベリー、黒ゴマ、ココナッツ・ゆずといった4種類のフレーバーをセットで楽しむことができた。
Lisaさんはフードの注文を受ける役割もしていて、カウンター越しのオーダーのやり取りもポートランド体験の一部になっていた。それまで現地でもポップアップで営業していた「HeyDay」は、イベント開催後の5月末にポートランドで待望のお店をオープンしている。
フレンドリーなコミュニケーションで盛り上げていたIan Williamsさんの「Deadstock Coffee」は、スニーカーがテーマのコーヒーショップ。コーヒーはもちろん、コールドブリューコーヒーとスイートティー、レモネードをブレンドしたオリジナルドリンク「Lebronald」も好評だった。
Ianさんはコロナ禍の以前にもTokyo Coffee Festivalなど日本でのイベントに何度か参加していたので、再会を喜ぶお客さんの姿も見られた。
Seiji Nanbuさんは日本とメキシコにルーツを持つアメリカ人。オーナーを務める「Electrica Coffee」では、日本の高品質なお茶とメキシコのコーヒーの両方を提供している。
今回はコーヒーのほか、ワインやチョコレート、チャイなど選りすぐりのポートランドの商品も併せて紹介していた。イベントのポスターのビジュアルも、Seijiさんによるものだ。
ポップアップは週末の2日間、12時から17時に開催され、各日の終了後にはミニ・トークセッションも実施。今回の提供メニューとそれぞれのお店についてや、ポートランドでのおすすめの過ごし方など、シェフやバリスタたちのトークが展開された。
取りまとめ役のSeijiさんを中心に集まったメンバーたちはチームワークがよく、ポートランドから一体感のあるエネルギーを運んできてくれていた。2日目は朝から初日以上に大勢の人たちが詰めかけ、フードは終了時間を待たずにソールドアウトに。
ようやくコロナ禍が落ち着いて国内外から人が集い、まさに兜町の一角がポートランドのバイブスに包まれた春の2日間となった。
Text : Takeshi Okuno
Photo : Nathalie Cantacuzino, Hubert Ly