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松井明洋
松井明洋

2021.04.01

松井明洋

Kontext編集長

都市の文脈をもとめて

K5を仲間達と創り上げるにあたり、何度となく日本橋兜町に通った。この街と恋に落ちた。

その過程で、早朝から日中、そして夜遅くまで様々なタイミングの街の表情を観察し続けた。「どのような要素がこの場所にさらに出現していくと、より彩りに溢れる状況が創り出せるのだろうか」という議論をしていくなかで、やはり最終的にはちゃんと誰がやっていて、各場所や店舗の情報をちゃんと遡ること(バックトラック)ができるかが大切だよね、と落ち着いた。

現代の日本において、どんな街に行っても大資本、チェーン店によるフラット化が進んでいる。僕らは均一なクオリティでなくても、24時間営業じゃなくても、少し提供に時間がかかっても、一言二言お店の人と他愛もない会話があちこちで起きている街こそが、そんなフラット化に対するカウンターになり得るのではないか、という想いもあった。

歴史あるこの街にもともとあるたくさんのユニークな店や場所に加え、さらにカラフルな小商が丁寧にキュレーションされ、編集され続けるこの街。その状況に、よりアクセスしやすくするには、というお題に対しての解答としての本ウェブサイトがある。

このお題に対する解答を模索するにあたってまず出発点としたのは、冒頭に述べた「情報のバックトラック」ということに加え、シムシティーというゲームを作ったウィル・ライトのほんの一文(*)。「…街っていうのは、こういったさまざまなもの、言ってみれば文化の中心になる組織体のことなんだと思うわけだ」。

この場合の「組織体」というのは、そのエリアで働いている、もしくは住んでいる、そして遊びにくるような人々の集合、そのコミュニティを指していると考える。となれば、その人の集合としての組織体を分解して、ぐっとミクロな視点でそれを形成する一人ひとりにスポットライトを当てることができれば、と。つまり、その人の集合こそが街や都市を魅力的にしている、と言えるのではないか。

僕らは常に、街には目に見えない文脈(コンテクスト)が数多く浮遊していると考えていて、それは時間の集積や歴史だったり、建物、立地や集う人々の思惑なんかが複雑に絡まりあっているのではないかと思う。そういった目に見えない文脈を「人」に焦点を当てて、その文脈をバックトラックしながら可視化していきたい。

ドラスティックに変わりつつある、日本橋兜町と茅場町の文脈、つまり魅力の可視化。文脈を意味する単語”Context”の最初のCをKabuto-cho の頭文字のKに変えて、”Kontext”という単語を本ウェブサイトのタイトルとした。

ぜひ、目に見えないコンテクストを可視化していくこのプロセスにお付き合い、お楽しみいただけますと幸いです。

(*)ウィル・ライト 著 多摩豊 訳 『ウィル・ライトが明かすシムシティーのすべて』 角川書店 1990

Kontext編集長
松井明洋

松井明洋

松井明洋

Akihiro Matsui

「日本橋兜町・茅場町再活性化プロジェクト」において、街づくりにおけるブランディングや誘致などのキュレーションを担当するメディアサーフコミュニケーションズ代表。

Text : Akihiro Matsui

Photo : Naoto Date