2022.11.11
Neki
二ツ星レストランやビストロロジウラでシェフを務めた西恭平さんがオープンさせた、兜町の人気ビストロNeki。日本全国の産地を巡って選び抜いた季節の素材を用いて、軽やかなフレンチを提供する。「大きな枠で捉えるとフレンチは自由な料理だと考えているので、和の食材やテクニックを合わせています。和と洋のバランス感がNekiらしさだと思います」と、西さん。スーシェフの高松さんやオープンから勤めている平井さんをはじめとして、キッチンスタッフがメニューを持ち寄って都度構成するというランチコースは、そんなNekiらしい料理をカジュアルに楽しめると評判だ。
ランチコース(¥6,000 税込)は、スープ、ビーバーブレッドのパン、魚料理2品、肉料理1品、デザート、食後の飲み物、小菓子などが含まれ、季節によって内容を変更。ワインペアリング(¥3,300 税込)も用意されている。
ハマチ昆布締め/プラム/胡瓜/紫蘇
ハマチの昆布締めなど、フレンチがベースながら和食のテクニックを用いたNekiらしい一品。「実は僕の曽祖父の西音松も和食の料理人で『味で勝負や 美味い昔の京料理』という本を出していたこともあるんです。父もシェフですし、一家全員料理人ですね(笑)。僕は和食の修行をしたことはないのですが、昔から曽祖父の本を読んで勉強していたので和のテクニックが身体に染み付いているんです」。魚介類は、石川県や高知県、千葉県から取り寄せることが多い。「例えば石川県のフードショップ桑原さんは、ヒューマン ネイチャーの心さん(高橋心一)に紹介してもらったんです。毎朝市場に行って魚を購入してもらっているのですが、朝5時に『今日はこの魚があります』って連絡がくるんですよ。すぐ返信しないと売り切れちゃうから、寝坊できない(笑)」。胡瓜や大葉、紫蘇など、ガスパッチョをイメージしながら和の食材で仕上げて。プラムのピクルスがアクセントに。
鮮魚/青のり/柚子胡椒/夏野菜
本日の鮮魚は、石川県から直送してもらったスズキ。「スズキは繊細な魚なので、素材の味わいを生かしたものを出したいってスタッフの声があって。みんなで試行錯誤した結果、ブールブランソースをベースに柚子胡椒を加えて、フレンチの中に和のエッセンスを忍ばせるという結論になりました」。オクラやモヘアなど、夏野菜は静岡の北山農園のもの。ネバネバした食感の野菜ですっきりと仕上げて。「北山農園さんは野草の種類が豊富で、無農薬有機栽培をしています。cavemanもこの農園から仕入れているはず。実際に足を運ばないと仕入れできないので、先日もキッチンメンバー数名で訪れたところです。他には、ロジウラで働いていた時の知り合いに紹介してもらった、高知の中里農園さんから野菜を仕入れることもあります。生産者は大体そんな感じで紹介してもらって繋がっていくことが多くて、タイミングが合えば足を運んでいますね。『こんな人いるよ』って言われたら、気になっちゃうから(笑)」。
津軽鴨/醤油麹/茄子/無花果
あっさりとした味わいながら、旨味のある津軽鴨を使用している。「僕の地元である京都の亀岡の鴨をはじめ、肉も日本全国の産地に足を運んで選んでいます。最近訪れたのは、宮崎の都萬牛の産地。黒毛和牛なのですが育て方が工夫されていて、赤身がしっかりしていて味も良かったですね。実際に産地を見にいくと、餌や育っている環境によって味が全然変わってくるということがわかるんですよ」。静岡の北山農園から仕入れた緑茄子やブッラーターチーズ、無花果を添えて。「Nekiでは、フルーツを使うのも定番ですね。そのまま添えたり、発酵させたりするのですが、農家さんに旬の果物があれば送ってもらうようにお願いしています。ちなみに、義理の父も千葉でブルーベリーを育てているんですよ」。
最後のデザートは、アイスとジュレ、オイルを添えた桃のコンポート。料理とデザートのバランスなど、全体の構成を見て整えていくのがNekiのスタイルだが、ランチのデザートは軽やかさが大事だとチームに伝え、当初のメニューから変更したのだという。
産地を巡って選び抜いた素材や和のテクニックを忍ばせたフレンチなど、ランチコースにも軽やかで心地よいNekiらしさが詰まっている。ここのキッチンスタッフみんなで考案する季節ごとに変わる料理が、何度訪れても新鮮な驚きをもたらしてくれるはずだ。
西恭平
Kyohei Nishi
1983年、京都生まれ。京都のホテルで修業後に渡仏、アルザス地方のオーベルジュで働いた後に帰国。二ツ星レストランのキュイジーヌ ミッシェル・トロワグロを経て、渋谷の名店ビストロロジウラのシェフを務める。2020年5月に日本橋兜町に自身の店Nekiをオープンさせ、2022年11月には姉妹店となるSongbookを世田谷代田にオープンさせた。
Text : Momoko Suzuki
Photo : Nathalie Cantacuzino
Interview : Momoko Suzuki