jp

en

石川由佳子
石川由佳子

2022.07.29

石川由佳子

アーバン・エクスペリエンス・デザイナー 一般社団法人for Cities 共同代表

よそ者の視点で探究する
街の新たな価値と文脈

国内外の都市や街に滞在してリサーチやワークショップ、ZINE制作などを行っている都市体験のデザインスタジオfor Citesの石川由佳子さん。ポッドキャストでも、都市や建築の気になるトピックについて肩肘張らないトークを発信している。街の風景をつくることに興味を持った原点は、子供の頃に遊んだドイツの公園だったという。様々な角度から街をとらえる視点を育んできたバックグラウンドと、よそ者として歩いた兜町のユニークさや可能性について伺った。

●いろいろな都市や街を訪れたり滞在される際に、どういうテーマや問いを立てていますか?
「よそ者としての都市」というのを一つのテーマとして、今はやっています。for Citiesを一緒にやっている杉田真理子も私もこれまで海外生活や移動が多かったこともあって、自分の故郷みたいな場所への意識が、あんまり強くないというか。物心ついた時から、よそ者だったというか。なので、居座る場所を今も探し続けている感じはします。一方で、外から来た者として街を見るという関わり方が一番フレッシュに街を見られるという。そのテーマで街に入り込んで、関わった街に必ず「置き土産」をして帰ってこようという形で国内外で活動をしています。

●こういう街をリサーチしたり、掘ってみたくなる、というのはありますか?
この間、福岡に行ったんですよ。福岡に行った人がみんな、帰ってきたくないって言うから、それは何でかなって。そういういい噂が立っているところは、行って自分の目で見てみたいって思いますね。

●ネットやSNSでの情報よりも、周りの人経由の話の方がそそられますか?
そんな気がしますね。知らない街に行く時も、人に会いに行くことが多くて、その人をキーとして、普通はすぐには行けない場所に連れて行ってもらえたり、人のつながりも広がっていくような感じはあるなと思いますね。

●福岡は実際に行ってみて、いかがでしたか?
やっぱり、住みよい街だと思いましたね。もちろん今、天神の辺りは再開発でものすごい工事中なんですけど、海と山が近いし、食べ物は美味しいし。いいなと思ったのが、BAPE(※1)のショップと、一膳めし青木堂という地元の定食屋さんが隣接してたんですよ。その風景がめちゃくちゃいいなと思って。福岡の原宿って私が名付けたエリアにあるんですけど(笑)、グローバルブランドとローカルなご飯屋さんが共存している風景がめちゃくちゃアジアっぽいなと感じました。

※1 NIGO氏が1993年に立ち上げたファッションブランド『A BATHING APE』のショップ。

●よそ者の視点だからこそ気付けたり、もたらせるものは何だと思いますか?
やっぱり、住んでる人が当たり前だと思っているところに何か価値をつけられるということかなと。街の人と話す時も、彼らがネガティブに捉えているものが、私たちにとってはすごく魅力的に見えたり、何か価値づけたりすることができるのかなと思いました。既存の文脈に違う文脈を重ねられるのがよそ者的な視点だと思います。

●当たり前すぎて気付いてないよさだけじゃなくて、ネガティブなものにさえも価値を見つけられると。
逆に地元の人が誇らしく語っているものが、よそ者的な視点だと全然魅力的じゃない、みたいなことも結構ありますね。

●そういう街を見る視点が育まれたバックグラウンドについて伺いたいのですが、どんな学生時代だったのでしょうか?
自分にとって大きく影響していると思うのは、小中学生の時に住んでいたドイツ・デュッセルドルフでの経験ですね。特に、子供のころ毎日遊んでいた「インディアン・プラッツ」という公園で。「冒険遊び場(プレーパーク)」という考え方で運営されていて、ヨーロッパを中心に世界中に広がっている公園のあり方なんですけど、私が遊んでいた公園も自由と責任をテーマに子供に遊び方の開発を任せるスタイルでした。今考えると、結構野蛮な公園でした。

●野蛮……ですか?
火も使えるし、私は小学生の頃によくカナヅチやノコギリを使って、廃材の山で家を建てるのが好きでした。そこで怪我もしたり、周りの子たちと道具を交換したりしながら社会性を身につけた気がします。自分が家の外のものと関われる最初の機会がそこで、その時から自分で街の風景をつくるということが好きになっていった感じがします。その場所では与えられた遊びはなくて、自分で遊びをクリエイトするし、公園の中も外もシームレスにつながっているので、気づいたら道に出て遊んでいたり。そういうことが幼少期にありました。

●日本の多くの公園のように、遊具があってそこで遊ぶっていうのとは発想が違いますね。
デュッセルドルフは大きい建物もあるんですけど、街なかに行くと、結構のどかなところで暮らしに手が届く感じはあったかもしれないですね。帰国した時に、それが一気に手が届かなくなったという感じはしました。

●暮らしに手が届かないというのは、生活にいろいろ決めごとがあってみんながそれに従う、みたいなことでしょうか?
そうです、そうです。システマチックというか、いろんな無言のルールがたくさんあって、それをフォローしなくちゃ生活の動線に乗り遅れるみたいな感じはしました。意外と自由に歩けないな、みたいなプレッシャーが帰国してからしばらくの間ありましたね。大学生や社会人になってからは、寄り道の仕方だったりを覚えて、自分が心地いい歩き方とか、街の見方みたいなことはできてきた気がします。

●高校と大学時代はどんな日々でしたか?
高校から日本に帰ってきて、違和感を覚えるタイミングが結構ありましたね。渋谷の近くの高校に電車を乗り継いで通っていたので、満員電車というものに出会い、やっぱり最初は日本の環境に慣れなくて、無意識にストレスを抱えていました。でも、自分としてはその状況も面白くて、自分は変わらないけど周りの人や環境が変わることで、自分のふるまいや性格が規定されたり、変わっていく、といったことを結構冷静に、客観的に見ていました。
そうやって毎日満員電車だったり、忙しく働く人たちを見る中で、私が見てきたドイツの風景と何か幸福度が違うな、笑ってる人が少ないな、と思って、その時に街っていうスケールに興味を持ったんですよね。
人の行為の現象の源にあるものは何なのか、街の構造や空間がそれをつくっているのかとか、そういうことに関心を持ったのが高校生の頃でしたね。
毎年、リサーチ小論文みたいなものを出さなきゃいけない高校だったので、色彩の心理学と空間についてや、公園についてリサーチをして、パブリックスペースへの関心が強まっていったのもその時でした。
父や祖父が建築をやっていたので、建物を見に行ったり、建物の本も身近にあったんですけど、どちらかと言うと私は建物の中のソフト、現象みたいなものに興味がありました。それと結構、人や状況を観察するのが好きな若者でしたね。
それで何か状況をつくるような領域の学問をやってみたくて、大学では都市社会学を学びました。その頃、Central East Tokyo(CET ※2)などの事例に出会い、理論立って説明できない非言語的なところに面白さがあるなと思い、アートプロジェクトとまちづくりみたいな分野を、個人的なテーマにしていました。

※2 日本橋・神田・浅草橋を中心とするエリアに点在する空き物件を活用して、2003年から2010年まで毎年開催されいてたアート・デザイン・建築の複合フェスティバル。

●大学卒業後のお仕事も、そうした学びの延長線上に進まれたのでしょうか?
場づくりに興味があったんですけど、設計をしたいわけじゃないし、と。人のふるまいはどうやって変えられるんだろうと考えた時に、あ、意識だ!とその時は思っていました。だから教育の場づくりに関心があって、受験勉強というより感性をどう育てるか、というような教育事業をしたいと思いベネッセ・コーポレーションという会社に入りました。直島でやっていたアートキャンプなどにも関わらせてもらいました。

●その後、ロフトワークに入社されたと伺っていますが、そこではどのようなお仕事をされていたのでしょうか?
ベネッセには2年しかいなかったんですけど、やっぱり場づくりをガッツリしていきたいと思い、大学生の時にインターンをさせていただいていたロフトワークに入りました。企業の働く空間のデザインだったり、私がメインでやっていたのは渋谷のまちづくりだったので、そこで、公共空間を使った社会実験やボトムアップでまちづくりに介入していく方法を開発する試みをしていました。そういう仕事を通じて、個人で探求してきたものがちゃんと社会につながっていく実感を得られたのは大きな経験でした。

●渋谷のプロジェクトなどでは規模も大きかったかと思いますが、特に大事にしていたことはありますか?
渋谷の計画となると、10年、20年のスパンでいろんな人たちが考えてきていると思うんですよね。都市のプランって長いものになっちゃうというか、頭でっかちになっちゃうところがあると思います。だから、いろんなビジョンを聞きながらも、とりあえずやってみませんか?みたいな感じで、3カ月ぐらいでできるプランを最初に出しました。アクションをまずしたいです、街を使いたいです、と屋上や路上を使う提案を最初にしましたね。
道玄坂を封鎖して道路を人のための場所にするようなストリート・ファニチャーを作るプロジェクトや、渋谷の遊休空間をリサーチして、雑居ビルの屋上をどうやってアーティストや表現する人たちの場所に転換できるのか取り組んだりもしていました。

●街でのプロジェクトで、人々により参加してもらったり、興味を持ってもらうためには、どういうことが必要だと思いますか?
まさにそこは難しいなと思ったところです。やっぱりみなさん、普段と違うものや新しいものへの警戒心はあるので、うまく橋渡しとデザインをしてあげないと、イベント的にやって終わりになってしまうなと。その時から関心を持ち始めたのがランドスケープデザインで、もっと俯瞰して土地の状況や、環境を見ることをしないと、機能や人間工学、経済的な指標だけで場所をデザインすることに限界があるなと思い始めました。。
周辺に植栽が豊かなところがあるから、ここだったら安心して人も虫も休めそうだとか、日当たりや風通しがいいとか、ビルの隙間で抜けがあるとか、何かそういう人間以外のデザインも含めて考えないといけないと感じています。だから最近関心を持って取り組んでいるのは、そういうみどりづくりというか、人間以外の視点から街をどうつくるかということに興味を持って調査したり、そういったプロジェクトに意識的に関わるようにしています。

●今、for Citiesを共同で運営している杉田真理子さんとは、ロフトワークでご一緒だったそうですね。
ロフトワークで場づくりを本格的にやれるチームをつくろうという新しい事業部の最初のメンバーでした。その頃から結構、関心が似てたので、一緒に企画して実施したりとか、他のメンバーが関心を持たない領域のイベントに、一緒に遊びに行ったりしていました。

都市との関わり方をどうするか、何か残していけるといいかなと考える中で、「置き土産」というコンセプトを思いつきました。

●お二人でfor Citiesを立ち上げたのはどういう経緯だったんですか?
2人とも独立してフリーでやっていて、ちょくちょく連絡を取り合ってたんですよね。何かしたいね、みたいな話をしていた時に、ZK/Uといういうベルリンでアーバニストのためのスタジオプログラムをやっている団体があって、そこのプログラムに一緒に応募しない?みたいな話になったんです。応募して通って、半年間滞在制作をすることになりました。、そこから、このプロジェクト面白いよとか、こんなの見たよとか、いろいろ情報交換してたんですけど、それを公開したら面白いんじゃない?ということで、Good News for Citiesという都市のグッドなニュースを話すポッドキャストを始めました。

●それが、2020年頃のことですかね。
コロナ禍になってドイツに渡航できなくなって、でも半年間スケジュールを空けていたので、その時に入国できたオランダへ行くことにしたんです。アムステルダムに、以前私が訪ねたCascolandというアーバニストの夫婦がいて、連絡したらちょうど新しいプロジェクトが始まるということだったので、じゃあ一緒にやりたいと言って行きました。

●オランダ滞在時に『よそ者としての都市』(※3)というZINEを制作したり、滞在先での活動をアウトプットとして形にされていますよね。
※3 石川さんと杉田さんが2020年9月〜11月に滞在したアムステルダムでの活動記録と観察の一部をまとめた冊子。デザインは現地で出会ったイラストレーター、デザイナーによるもの。

都市との関わり方をどうするか、何か残していけるといいかなと考える中で、「置き土産」というコンセプトを思いつきました。自分たちがそこで受けたものをちゃんと形にして地域に残していこうということで、そのZINEと、現地のプロジェクトメンバーとコレクティブ・マップをつくりましたね。

●継続的に関わっていきたいという都市もありますか?
情報交換も含めて、オランダも継続的に関わっていきたいなっていうのはあります。今後、飛行機での行き来がどれぐらいのハードルになるかというのもありますが、彼らを日本に呼べるといいなとも思っています。
ただ、for Citiesを立ち上げた時からアジアのリサーチをしたいという話はしていました。コロナ禍で渡航できてなかったので、来年は中国やベトナム、韓国にも行ってみたいなと思っています。

●兜町へは何度かいらしたことがあって、今日も取材の前に30分ほど一緒に歩いていただきましたが、石川さんのよそ者の視点で兜町を見るといかがですか?
正直なところ、まだ自分との接続点を見つけられていない街という感じはします。自分が金融の世界と遠いというのもあるかもしれません。

道のあり方をもう少しフレンドリーに変えていくようなことができると、メインストリートが変わっていくというか、人の歩き方がもっと変わっていきそうな感じもしましたね。

●街に馴染んでくるというか、街との接点のきっかけはどういうことでしょうか?
例えば、今日立ち寄ったコーヒーのお店、SRみたいなところで顔見知りになるとか、もうちょっと顔が見えるようになることだったり。あとはたぶん、もうちょっと歩き続けることかなっていう感じもしました。このエリアはビルが多いので平面(路上)の歩きだけだとちょっと物足りない感じがしました。建物の中を探索したり縦の動きもしていくと、もうちょっと解像度が上がって、自分と街が近づくのかなとも感じました。

●今日、歩いて周ったのは1階、地上の高さだけでしたね。
あと、兜町を歩いていて意外と車が来なかったので、もうちょっと道のデザインのしようはありそうだなという感じはしました。K5の辺りもそうですけど、ちょっと裏手っぽくなってるじゃないですか。かつて裏通りだったようなところが今、表になってきている感じがしました。その時に、道のあり方をもう少しフレンドリーに変えていくようなことができると、メインストリートが変わっていくというか、人の歩き方がもっと変わっていきそうな感じもしましたね。

●今はどこかへ行く時に、スマートフォンのマップを見て点と点をつなぐルートを移動することも多いですが、その間の道にも何か発見があったりするとより面白いかもしれないですね。
兜神社の横の細い道とかも、ちょっと面白い道だなと。あの道を進んで、目の前に川が開けたら結構、感動するんじゃないかな、とか。今メインの道じゃないところを、うまく演出できると面白そうですね。

●去年の東京・西池袋でのfor Cities Week(※4)の時も、会場の周りの道にプレーパークみたいにいろいろな仕掛けがされていましたね。
※4 これからの都市を考えるための実践を学び、体験できるフェスティバル。2021年は東京と京都で開催された。今年は、7月にカイロ・エジプトで現地パートナーと共に開催した。

ジャンプして叩くパンチングボールを設置したり、壁面で遊べる用にテープを貼ったり、いろんなアーバニストが参加して、手づくりでやってましたね(笑)。会場のオーナーさんが気に入ってくれて、今も路上にいくつか残って日常の風景になっていったのはうれしい出来事でした。

兜町は緑とか、等身大の人の活動が見える感じが素敵だなって。一つひとつが歴史のある建物でもあるし、特有の風景をつくっているなと思います。

●まだ全貌はつかめていないところもあるかと思いますが、兜町のユニークさ、ポテンシャルが垣間見えたことはありますか?
鎧橋の辺りまで歩いてみて、川へのアクセスとか、川の使い方、こういう金融の街と川の関係をもうちょっと考えてみたいなと思いました。川を越えるとまた風景が変わったり、川っていう場所が小休止になっている感じは面白いですね。川沿いと道が90度に交わる角地の小さな面をうまく使うのは、ポテンシャルがありそうだなと思いました。端っこなんだけど求心力もあるというか。市民が関われる余地のある場所になりそうだなと。喫煙スポットが川のところにあるじゃないですか。それが喫煙者のためだけじゃない、小休止スポットとかになっていると、街の中に居場所がもっと増えそうだなと、川の可能性を感じました。

●江戸と明治の時代には物資の荷揚げ場であったり、兜町の近くの川は歴史的にも人や物の往来が盛んだったようです。
あとは、思ったより緑を感じられる風景があるなと思いました。同じ金融街でもニューヨークのウォールストリートなんて、もう建物の圧迫感が半端ないじゃないですか。そういう意味では兜町は緑とか、等身大の人の活動が見える感じが素敵だなって。木をふんだんに使った新しい建物のお店(平和どぶろく兜町醸造所)ができていたりとか。
それと、兜町はやっぱり一つひとつが歴史のある建物で、特有の風景をつくっているなと思いますね。これを今、新しく一からつくるのはしたくてもできないことだと思うので。こういう風景は何か料理のしがいがある場所なんじゃないかな、という感じはしましたね。

●兜町でもしワークショップやイベントをやるとしたら、やってみたいことはありますか?
今パッと思いついたのは、銀行や取引所とか、普段は情報セキュリティ上、絶対オープンじゃない場所を公開して、そこに特別に入れるみたいなのはちょっと面白そうですね。建物の中をもうちょっと見てみたいなっていうのは思いました。
ロンドンでオープンハウス(※5)っていうイベントが長年開催されているじゃないですか。あれも建築教育みたいなものの一環として街開きをして、普段入れない場所だったり、大人だけが行ける場所に子供も行けるみたいな体験をつくったりしています。

※5 ロンドンで毎年9月に開催。普段は一般公開されていない名建築の数々が無料公開され、ガイドツアーなども行われる。

これまでの行為や関わり方を変えるスイッチが大事かなと思います。

●金融の街ならではの企画ですね。
あと、男性のスーツ姿がやっぱり多いので、出社パジャマデーとか浴衣デーとか、街全体で装いを変えてみる日とかをつくると、ずいぶん雰囲気も変わりそうで面白そうですね。

●昨年のfor Cities Weekでは、「自分たちの手で都市の暮らしをつくっていく」ことをテーマにされていましたが、兜町を訪れる人や、働いたり暮らす人たちが、街をより使いこなす、自分たちでつくっていく、といった意味での関わりしろや余地は、どう見出せると思いますか?
これまでの行為や関わり方を変えるスイッチが大事かなと思います。例えば、新しい建物を建てる時や改修する時に、そのプロセスを開いていくのも面白いなと。ドイツでも事例があるのですが、一時的に滞在してもらって機能を決めるとか。下北沢の道づくりで面白かったのが、草木が茂る公園をつくるにあたって、計画段階で子供たちを公園で遊ばせて、その遊んだ道を実際の道としてデザインしていくというやり方でした。
あとは建物ができた後のメンテナンスの部分にいろんな人が関わる、というのもいいかもしれません。例えば、カブトワンのあのロビーはもっと外に開けた場所になる可能性はあるのかなと。おそらく何かを新しくつけるより、既存の場所や機能を読み換えて使っていくことかなと思います。

●最後に、for Citiesとして今後やっていきたいことについて教えてください。
今年はいろんな場所に滞在しながらプロジェクトをする機会をいただいたりもしていて、7月はエジプトのカイロに滞在しながら、現地のリサーチセンターと一緒に展示をします。帰国してからは、9月から10月にかけて神戸市の長田区で、滞在しながらその町のためのプロジェクトを立ち上げます。
個人的には、都市の中でのセーフティーネットみたいなテーマは結構気になっていて、今までと違うお金に頼らない形で支える形をどういうふうにつくれるかに関心がありますね。それがコミュニティなのか制度なのか、空間なのかも含めて、考えていきたいなと思っています。

石川由佳子

石川由佳子

Yukako Ishikawa

アーバン・エクスペリエンス・デザイナー / 一般社団法人 for Cities共同代表理事
「自分たちの手で、都市を使いこなす」ことをモットーに、様々な人生背景を持った人たちと共に、市民参加型の都市介入活動を行う。(株)ベネッセコーポレーション、(株)ロフトワークを経て独立、一般社団法人for Citiesを杉田真理子とともに立ち上げ。「都市体験の編集」をテーマに、場のデザインプロジェクトを、渋谷、池袋、アムステルダムなど複数都市で手がける。最近では学びの場づくりをテーマに、日本財団とともに自分のあたり前”ズラす”学びの場「True Colors Academy」や、アーバニストのための学びの場「Urbanist School」、子供たちを対象にした都市探求のワークショップ「City Exploration」を立ち上げ活動中。都市の中で、一番好きな瞬間は「帰り道」。

Text : Takeshi Okuno

Photo : Naoto Date

Interview : Takeshi Okuno