2022.06.17
caveman Full Breakfast
K5の1階に入るcaveman。日本やフランス、デンマークなど多様な文化に創発されながら、国籍やジャンルに囚われない先鋭的な料理で、食べた人に新たな発見を与えてくれるレストラン。昼と夜のコースのほか、ホテルの一角とあって、朝食メニューも提供している。その朝食メニューについてマネージャーの森本浩基さん、スーシェフのトシさんに聞いた。
温かいポタージュ、みずみずしい野菜のサラダ、自家製ソーセージ、パンの盛り合わせ、ワッフル、ドリンクがセットになったフルブレックファースト(¥3,850 税込)。満足度が高いと評判のこの朝食メニューを手がけたのは、cavemanスーシェフのトシさんだ。
「フルブレックファーストは、当初、K5に宿泊したゲストのために始めたものです。cavemanで昼と夜に出している料理とはテイストが違うので、朝食メニューを考えるのは手探りでした。付き合いのある有機農家さんたちから旬の野菜を仕入れ、シンプルに素材の味を引き出すことは、昼や夜の料理と同様に大切にしています。ソーセージやパンもすべて自家製なので、けっこう手間暇かけていますね。特にサワードーのパンはオリジナルレシピでこだわって作っているもので、このフルブレックファーストの主役になっています」
1.Carrot soup with salmon and poached egg
人参のポタージュ サーモンとポーチドエッグ
「人参は、群馬県嬬恋村の安田嶺の育てたものを主に使用しています。安田嶺は、東京出身で4年前に嬬恋村に移住して、有機農業を営んでいる29歳の農家です。おもしろいやつで、みんな仲が良いんですが、K5のオープニングパーティの時は酔っぱらって大変でした(笑)。夜の料理のエゾシカも北海道で狩猟している20代の女の子のものだし、cavemanでも、Kabi時代から付き合いのある同世代の生産者の食材をたくさん仕入れていますね」。味の凝縮した人参を濃厚なスープに仕立てて、塩とカモミールでマリネしたサーモンとポーチドエッグを添えて。暖かいスープとして、パンをディップして楽しみたい。
2. Fresh and roasted vegetables salad
焼き野菜のサラダ
新ジャガイモ、わさび菜、トマトなど、旬の野菜に軽く火を通して旨味を引き出したサラダ。下に、ブラックペッパーを効かせたハーブとクリームチーズのソースを忍ばせて。「野菜は山梨県のものが多いです。今日のサラダは、北杜市のクレイジーファームと、富士山麓に位置する北山農園から取り寄せた旬の有機野菜。ハーブは、K5でポップアップをしたこともある北杜市のハーブスタンドのもの。cavemanのメンバーは、定期的にハーブスタンドに研修に行っているんです。おなじみのものから初めて見るものまで、無農薬で栽培されているハーブは香り豊かで味わい深いですね」
3. Homemade sausage with herb sauce
ソーセージとハーブソース
自家製ソーセージは、作り立てで提供。ハーブスタンドから仕入れた7~10種のハーブを混ぜて、さっぱりと軽やかな味わいに。「僕の出身のカナダでよく食べる、大きなソーセージをイメージして作りました。ボリュームはあるけれど、朝食とあって重たくはないものにしたかったので、ハーブをたくさん使うことで軽やかに仕上げています。バジル、イタリアンパセリのほか、タイ料理に使われることの多いコブミカンの葉を混ぜて、オリエンタルな風味を加えたのがポイント。卵黄とハーブのソースは、朝ごはんに目玉焼きを食べていた時に思いつきました」
4.Assorted bread with fermented butter
パン盛り合わせ 発酵バター
サワードーを使ったオリジナルレシピの自家製パンは、常時3種ほど用意。「天然酵母を発酵させたサワードーを使っているので、やや酸味のある味になります。通常のサワードーは、小麦粉と水を足して発酵させたスターターか、レーズンを発酵させたレーズンスターターのどちらかがスタンダードですが、cavemanでは両方のスターターを組み合わせて作っています。それによって、酵母に力強さが出て、パンがふっくらと軽やかに仕上がるんです。うちのパン職人がオリジナルで始めたものなので、他店ではあまり見かけないですね」。バターミルクとクリームを10時間熟成させた発酵バターも、ファンの多い逸品。
最後は、ワッフルをメープルシロップとサワークリームとともに。ドリンクは、スイッチコーヒーのコーヒー、櫻井焙茶研究所の和紅茶、オレンジジュース、コンブチャから選ぶことができる。K5のゲストのためだけに提供していたフルブレックファーストだが、4月からは、宿泊者以外も予約することが可能になった。cavemanの素材へのこだわりや料理に対する哲学に触れながら、兜町の朝時間をゆったりと楽しみたい。
森本浩基
Hiroki Morimoto
1989年、大阪府生まれ。オリンピック選手を目指し水泳に明け暮れていた学生時代に出会った教師の影響から心機一転、教師になるため天理大学へ進学するも、徐々に飲食の世界へ。バーテンダーやレストランでのマネージャー経験を経て、ソムリエ試験に合格、ソムリエに。以後、アジアNo.1レストラン「Gaggan(ガガン)」でソムリエの経験を積み、帰国後はcavemanへ。現在はソムリエとしてだけでな く、マネージャーとしてチームを率いながら日々活躍している。
Text : Momoko Suzuki
Photo : Nathalie Cantacuzino
Interview : Momoko Suzuki